上顎前方牽引装置+チンキャプ(MPA)
 装置の目的
・この装置は反対咬合(前歯の咬み合わせが逆)の方の上下のあごの位置のコントロールに使用される「かぶる」装置です。ほとんどが小学校低学年の子供に使用され、中学生になるとほとんど効果のない場合が多いので使用されなくなります。従って、反対咬合の子供のための装置と言って良いでしょう。作用は上あごを前方へ引き出し、下あごを後退する事ができます、見た目は良いとは言えませんが、その効果は一生懸命に使っていただければ非常に高いものがあります。最近は乳歯期の幼稚園の年長さん程度でも使用して非常に良い効果を挙げており、当院の特徴ともなっています。上下のアゴの位置がズレて反対咬合になっている場合には、積極的に使用して「手術しなくても治療できるように」を心かけています。
 装置の仕組みと使用方法
・MPA+チンキャップは上の奥歯のバンドを介して上あごに固定されたプレートとこのプレートを前方に引くゴムを固定するためのフェースボーと頭にかぶる部分のヘッドキャップ、オトガイ部(下あごの前方部)をおおうチンキャップからできています。この装置によって上あごを前方へ引き出して、下あごを後退させる事ができます。
・口の中には上の奥歯に体に害のない歯科専用の接着材で装着された金属製のバンドが接着され、この左右のバンドを介して上あごを広く覆うMPAプレートが装着されています。この口の中の装置は自分で取り外すことはできません。しかし、フェースボーとヘッドキャップ、キャップが一塊りなった帽子状の部分は簡単に取り外す事ができます。
・装着方法はまずフェースボーが眉間の中央にくるようにヘッドキャップを装着し、オトガイ部にチンキャップを適合させてから、左右のゴムに通された留め具をチンキャプの両側のフックに入れてください。最後に左右の上の奥歯のバンドの外側についているゴム用のフックから、フェースボーのフックにゴムをつけて下さい。
・14時間きちんとやらないとなかなか効果があがりません。最低12時間以上は使用しましょう。学校や塾、習いものに行く時や友達が家に遊びに来た時には外してもかまいません。しかし、それ以外で、家にいる時にはこまめに使用してください。また、食事時の時やお風呂に入る時、歯を磨く時にもはずしてください。
 注意事項
・スポーツをする時やケンカになった時には注意してください。ふいに装置に外力が加わって装置が外れたりズレて、怪我をする危険があります。
・MPA+チンキャップを最初に装着する場合には、あまり痛くならないように、弱い力に調節してあります。
・チンキャップの装着の方向は斜め上方45゜です。意図的にチンキャップの位置をオトガイの下に移動して、力のかかる方向が上方になっている場合がありますので注意してください。
・この装置を外す際には、口の中のゴムをはずしてから、左右どちらかのチンキャップの留め具をはずせば、簡単に帽子を脱ぐように、取り外しができます。服を脱ぐような装置全体をひっぱて取り外しをすると治療に最適な力の方向や力の強さが変わってしまう危険があります。また、ゴムの強さや留め具の位置はすでの調節済みですので、患者さんや保護者の方は変えないで下さい。
・時間表をしっかりつけてください。時間表をきちんとつけなかったり、ウソを書くと治療上の支障となります。例えば、ヘッドギアーによる歯や顎の移動が順調に進まない時に、単に装置を充分使用していないだけなのか、装置の力の強さや方向、装置のタイプが適合していないのか解らなくなってしまいます。ある程度の時間、装置を装着しているのに、効果が現れない場合には、装置の力の強さや方向の調節が必要です。しかし、時間表をきちんとつけていないと、どの程度の調整が必要なのか、このままで良いのかわからなくなってしまいます。
・装着しているMPAプレートの裏側が不潔なる場合があります。これがこの装置の唯一の欠点です。できるだけ汚れが付着する空間が少なくなるように作成していますが、しばらくの間ご辛抱願います。これは上あごを前方へ引き出す力があごの粘膜にも分散される歯にかかる負担をできるだけ軽減するための必要悪とご理解下さい。

 緊急事態
・装着した日から3〜4日、オトガイ部や奥歯に違和感や弱い痛みを感じることがあります。
 
これは、装置に慣れていないからで、異常なものではありません。ほとんどの場合、一週間後には装置をつけても全く痛くなくなりますので安心してください。

・オトガイ部が赤く炎症を起こしたり、傷ついた皮膚がなかなか治らないような場合
 チンキャップの形状がその患者様に適合していない場合があります。この場合にはオトガイ部の型をとって、その患者様用のチンキャップを作成しますので来院して下さい。

・装置が変形したり、うまく装着できなくなくなった時
 自分で修理しようと思わずに必ず来院してください。自分で曲げたりするとさらにひどく変形してしまったり、金属が疲労して折れたり、あとで折れやすくなったりする事があります。

・口の中の奥歯のバンドが浮き上がった感じがしたり、カタカ
タ動く、奥歯の歯茎が痛いような気がする時

 この場合はバンドが歯から外れていたり、バンド自体が割れている事があります。このまま装置を装着するとさらにひどく壊れてしまう事がありますので、一旦装置の使用を中止してご連絡ください。なるべく早く修理するようにします。
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